短編小説: 税の迷宮の国

税の迷宮の国

むかしむかし、ある国に「帳簿の森」と呼ばれる場所がありました。
そこには無数の道があり、すべての国民は毎年そこを通らなければなりませんでした。

森の入口には看板が立っていました。

「正しく進めば、あなたの義務は果たされます」

しかし問題がありました。
その道はとても複雑な迷宮だったのです。

道は何百にも分かれ、

  • 給料の道

  • 事業の道

  • 控除の小道

  • 特例の抜け道

  • 申告の橋

  • 修正の沼

などが絡み合っていました。

森の奥には「徴税の城」がありました。
そこには森の地図を読むことができる人々が住んでいました。

  • 森の案内人(税理士)

  • 森の記録官(会計士)

  • 森の番人(税務署)

彼らは悪い人ではありません。
むしろ、とても勤勉で誠実でした。

ただし、森はあまりにも複雑だったので、
普通の人は彼らの助けなしでは通れないのです。

ある日、一人のパン屋がつぶやきました。

「パンを焼く時間より、
森の地図を読む時間のほうが長い。」

隣の大工も言いました。

「家を建てるより、
帳簿を書くほうが難しい。」

農夫はため息をつきました。

「収穫の喜びより、
申告の心配のほうが大きい。」

やがて国の人々は気づき始めました。

森を通るために

  • 時間を使い

  • お金を使い

  • 心配をし

  • 失敗を恐れる

ようになっていたのです。

それは税そのものよりも
迷宮そのものが人々の力を奪っていました。

ある子どもが王様に質問しました。

「どうして森はこんなに複雑なの?」

王様は答えました。

「昔、誰かが困るたびに、
新しい道を一本ずつ作ったのだ。」

  • 農家のための道

  • 商人のための道

  • 家族のための道

  • 老人のための道

  • 新しい産業のための道

どれも善意から作られました。

しかし何百年も経つと、
森は誰にも理解できない迷宮になってしまったのです。

子どもは言いました。

「道を増やすより、
森を小さくすればいいんじゃない?

その言葉を聞いた大人たちは、しばらく黙りました。

なぜなら誰も
森を作り直す勇気を持っていなかったからです。

それ以来、この国では毎年同じ議論が続いています。

  • 「新しい道を作ろう」

  • 「いや、この道を直そう」

  • 「この小道を少し広げよう」

しかし誰も言いませんでした。

「迷宮をやめよう」

と。

そして今日も人々は
パンを焼き、家を建て、畑を耕しながら

毎年、帳簿の森をさまよっています。

彼らが本当に望んでいるのは
税がなくなることではありません。

ただ一つ。

まっすぐな一本道です。

迷宮を守る人々

かつて「帳簿の森」と呼ばれる巨大な迷宮がありました。

そこには無数の道があり、
人々は毎年そこを通らなければなりませんでした。

商人も、農民も、職人も。

しかし迷宮にはもう一つの住人がいました。

迷宮を守る人々です。

彼らは悪い人ではありませんでした。

むしろ、とても誠実でした。

迷宮の中には多くの役割がありました。

  • 道を案内する者

  • 地図を作る者

  • 規則を解釈する者

  • 間違いを見つける者

  • 新しい道を設計する者

彼らは皆、迷宮を維持するために働いていました。

ある日、王が言いました。

「この迷宮を壊そう」

国中が驚きました。

迷宮は何百年も続いてきたのです。

最初に反対したのは案内人でした。

彼は言いました。

「迷宮は必要です」

「複雑な道があるからこそ、公平が守られるのです」

「すべてを単純にすれば、
弱い人が困るでしょう」

彼は本気でそう信じていました。

次に反対したのは地図職人でした。

「私はこの迷宮の地図を30年かけて作りました」

「誰も理解できないと言われるが、
それは努力が足りないだけです」

彼は迷宮を愛していました。

それは彼の人生そのものだったのです。

規則の学者も言いました。

「社会は複雑です」

「税も複雑であるべきです」

「単純化とは、現実を無視することです」

しかし、本当の理由はそれだけではありませんでした。

迷宮の中では、多くの人が生きていました。

  • 案内人

  • 地図職人

  • 規則の学者

  • 書記

  • 計算士

迷宮がなくなれば、
彼らの仕事もなくなるかもしれません。

ある若い役人が言いました。

「もし迷宮を壊したら…」

「私たちは何をすればいいのですか?」

誰も答えませんでした。

そのとき老人が言いました。

彼は迷宮の最古の番人でした。

「私はこの森を50年守ってきた」

「だが知っている」

彼は静かに続けました。

「この迷宮は必要だからあるのではない」

あるから必要になったのだ

人々は黙りました。

老人は言いました。

「迷宮は悪ではない」

「多くの善意が積み重なってできた」

  • 困っている農民を助ける道

  • 小さな商人を守る道

  • 新しい産業を育てる道

すべて善意でした。

しかしそれが百年続くと、

誰も全体を理解できない森になりました。

若い役人が聞きました。

「では壊すべきですか?」

老人は答えました。

「それは難しい」

「迷宮は石ではできていない」

彼は地面を指しました。

「迷宮は人の仕事、誇り、恐れでできている」

その夜、迷宮の中で多くの人が考えました。

もし迷宮が消えたらどうなるのか。

誰も答えを知りませんでした。

ただ一つ確かなことがありました。

迷宮を作ることより、壊すことのほうがはるかに難しい。

そして次の年もまた、

人々は迷宮を歩き、

迷宮の守り手たちは、

静かにそれを維持し続けました。

税の迷宮を壊した国

遠い海の向こうに、
かつて「帳簿の森」という巨大な迷宮を持つ国がありました。

国民は毎年その森を通らなければならず、

  • 商人は帳簿を抱え

  • 農民は領収書を束ね

  • 職人は計算に頭を抱え

多くの人が森で迷いました。

森を案内する人たちはいました。

  • 森の案内人(税理士)

  • 森の記録官(会計士)

  • 森の番人(税務官)

しかし森はあまりにも複雑で、
誰も全体の地図を知らなかったのです。

ある年、国は大きな不況に見舞われました。

商人は店を閉め、
職人は仕事を失い、
若者は挑戦する気力をなくしました。

そのとき新しい王が即位しました。

王は森の入口に立ち、三日三晩それを眺めました。

そして言いました。

「この森は税を集めるためのものだ。
しかし今や、
人の時間を奪う迷宮になっている。

大臣たちは驚きました。

「では、道を整理しましょう」

王は首を振りました。

「違う。」

四日目の朝、王は命令を出しました。

「森を壊せ。」

国中が騒然となりました。

税の番人は言いました。

「そんなことをすれば税が取れません。」

学者は言いました。

「制度は精密でなければなりません。」

役人は言いました。

「例外をなくすことは不公平です。」

しかし王は言いました。

「公平とは、
誰でも理解できることだ。」

一年後、森はなくなりました。

その代わりに、
国には一本の大通りができました。

税の仕組みはこうなりました。

  • 税は数種類だけ

  • 計算は誰でもできる

  • 申告は紙一枚

商人は驚きました。

「これだけでいいのか?」

農民も驚きました。

「一晩で終わった。」

職人は言いました。

「今年は道具を作る時間が増えた。」

やがて不思議なことが起きました。

国の人々は、

  • 新しい店を開き

  • 新しい畑を耕し

  • 新しい発明を始めました

なぜなら、
未来を計算できるようになったからです。

森がなくなると、
税の番人たちは失業すると思われました。

しかし王は彼らに言いました。

「迷宮を守る仕事は終わった。
今度は国を良くする仕事をしよう。」

彼らは

  • 学校を作り

  • 道路を整備し

  • 新しい産業を助けました。

数十年後。

旅人がその国を訪れました。

彼は不思議に思いました。

「どうしてこの国はこんなに活気があるのですか?」

老人が答えました。

「昔、ここには迷宮があった。」

「それをどうしたのですか?」

老人は笑いました。

「壊した。」

旅人は驚きました。

「そんなことができるのですか?」

老人はゆっくり答えました。

「迷宮は石ではできていない。
人の恐れでできている。

そして老人は最後にこう言いました。

「壊すのに必要なのは
計算ではない。

勇気だ。



あとがき

食品の消費税率のみを変える。
控除額を細かく変更する。
暫定税率?
何やってんの?

「公平とは、誰でも理解できることだ。」
至言だと思います。

税制の単純化に向けた一つの提案

AIは税制の単純化の方法として「土地課税」を提案してくれました。

しかし現在の技術環境を前提にすると、
より実用的でシンプルな方法があるのではないかと思います。

そこで私が考えているのが、
政府が電子決済サービスを提供する仕組みです。
ここでは仮にこのサービスを GOV-PAY と呼びます。

この仕組みでは、電子決済の手数料そのものを税金とします。
そして GOV-PAYで行われた取引はすべて非課税とします。

つまり、

  • GOV-PAYを使う

  • 決済時に自動的に手数料(=税)が徴収される

  • それで納税は完了

という非常に単純な仕組みです。

この制度では、すべての決済をGOV-PAYで行えば
確定申告そのものが不要になります。
GOV-PAYを使わない選択肢もあります。
その場合は確定申告が必要になります。

現金の扱い

制度移行をスムーズにするため、現金はすぐには廃止しません。

ただし、紙幣の発行は停止し、
硬貨のみを流通させることを想定します。

硬貨だけの現金取引は、大きな金額になるほど不便になります。
そのため、高額取引は自然に電子決済へ移行すると考えられます。

現金取引には課税できませんが、
硬貨だけの現金では大規模な脱税は現実的ではないため、
影響は限定的だと予想できます。
収入が少ない人は、現金のみを使えば無税で生活が可能です。
生活困窮者には給付を行えば良いと思います。
徴税コストが大幅に減っているので、十分な給付予算が確保出来ると思います。

最終的な姿

GOV-PAYは直接サービスを提供しなくてもかまいません。
既存の電子決済サービスが徴収を代行しているということにすれば、
来年からでも実現可能だと思います。

この仕組みが普及すれば、社会は徐々に
電子決済中心の経済へ移行していくでしょう。

しかし硬貨という現金が残っているため、
制度の移行は急激ではなく、
社会にとって無理のない形で進むと考えられます。

その結果、

  • 税制は極めてシンプルになり

  • 納税の手間はほぼ消え

  • 脱税・節税のためのコストもなくなる

という社会が実現するのでは?と思っています。

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